「わすれた」

わすれた
そう書いたら 涙が溢れた

わすれる
ことがまだ あったと知って

  おもかげが
  ゆうぐれのむらさきの雲のよに

  流れた 

  *

わすれない
そう書いて 消した

放たれれば
ふりしぼった矢のように どこかに向かい

(ふいに
かなたの雲が 血を流すだろう)

  それでも
  確かにあるまだわすれる

  何か

   *

わすれた
死を学ぶように丹念に いいきかせ

いつか
かえっていく丘の上

〈曲あり〉

 ――――――歌劇【ハルシュタット】より

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