ゴールデン・メトロ

気づけばボロい地下の駅
かつて志を共にした
同志の手には綱と雄牛
私には目もくれず、
各々の行き先へ歩みだす

追いかけても追いつかない
いくら叫んでも届かない
駆け込み乗車は嫌われるから
扉はバタンと固く閉じ
行きの電車は行ってしまった

もう、誰も振り返らない
誰も私を見てくれない
私が忘れ去られていった
その瞬間が見えたんだ

開き直った私は裸足のままで
きらびやかな地下街をのし歩いた

マダムが好むゴテゴテ自慢の高級志向
庶民が入る隙間はない
だけど私は貴婦人の真似をして
高いお菓子や服を貪り
宝石身につけ、そそくさ逃げる
お金なんて無いくせに
どうせバレることもない
私は誰の記憶にも残らない

広告パネルは名画のように
夢想の時を映し出す

ブロンドの髪の乱れ具合は
あの日眺めた黄金花火
雄牛の喘ぎと快楽のために
無数のコインを打ち上げる

踊り狂う筋肉の要塞
乱れ咲く桃の花
百合の痛みと薔薇の官能
豆を震わす痺れまでも
綯い交ぜに、あやふやに
内部の乾きを潤していく

わざと忘れた靴のことは
最早、脳髄の隅にも置かれていない

そうこうするうち、電車が来た
乗客は私一人、キセルを吸って堂々と
壊れかけのドアが閉まる
終点は夢の果て

アラームが鳴る、意識が戻る

あぁあ、今日は月曜日

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