お金がない

お金がない
お金がないと思いながら
毎日生きてる
年金が入る度 次こそは
親に借りた1万円を
返そうと思っているのに
よくわからない人が私から
2万円をむしり取ろうとしてる
よくわからない人
芸術家ではなくて
例えば私に覆いかぶさる
霧と言うか靄と言うか
人と呼んでも怪しい
私のウォークマンの
画面を粉々にしたのは誰か
あのトカゲを
食当たりにして
からからの死骸にしたのは誰か
私が芸術家として
ひとり立ちする前に
立ちはだかるのは何か
書いても書いても
渇かぬ胃液
過食は
やめようと思ったらやめられるのか
今食べなかったら成功するのか
それでは今食べてるポテトチップスは
不幸なのか失敗なのか
食べなかったら不幸なのか
過食は
食べるから失礼なのか
でも結局食べちゃう
食べないことが苦難を乗り越えた
ことになるとはあまり思えない
私の知り合いの中で一番太ってる人
思い浮かべて
あの人に服があるなら
私にだって服があると思って
食べて
食べた後
あの人は痩せたことに気が付く
あの人は苦難を乗り越えたと思う
あの人の幸福を思い浮かべて
あの人は幸福が遠くて
やせて美人になっても
まだ不幸をやっていて
年に一回
たましいの業を開放して
普段妖精なのに
人間の姿になってこちらに
冊子を売っている
妖精が人間になったら
芸術家になれる
お金がない
お金を毟り取られる
誰かの電磁波
創価学会のお励みのお経
外山恒一の植えた種
認知していない奇形児
あたしは何番目の女?
あたしは何番目に売れるの?
天照大神は私の彼だけど
実在するのかしないのか
わからないのに
毎日約束していく
あたしはあんたの女って
あたしはこの国に殉ずるって
誰もあたしを歓迎しない
あたしはこの国に誓った
現に税金を1万払った
だけど私みたいな人は
ごまんといるらしく
あたしより下は
いくらでもいるらしい
あたしがあたしを
報いないといけない
ということ
そうね わたしは
痩せるなんかより
もっとやることがある
あたしは妖精
筑紫の国に生まれた
祖先は河童と海女
海女はモダンガールになって
河童はシティボーイになったように
私も人間にならなくちゃ
今を生きなくちゃ
今を愛さなくちゃ
今初めてわかったわ
お金がないんじゃなくて
お金を使いすぎだということ

コメント

“お金がない” への4件のフィードバック

  1. 花緒
    花緒

    とかく出だしと筆致が良いと思う。
    読み進めたいと思える文体というか

  2. 西の子
    西の子

    特にこれという意識があるわけではないですが、去年バズった中島みゆきのオールナイトニッポンの口調がこの詩を書いていた時に頭に残ってました。ブスでいじめられた女の子の、「あんたはあんたでいて頂戴ね」みたいな、テンポというか、句読点(ここでは改行ですけど)の打ち方とか。

  3. 花緒
    花緒

    面白いですね。
    口語調を意識しているのがよいのでしょうね。
    話すように書くと良い文章が書けるよ、と言われることがありますが、
    話す、発話する、ことを意識しつつ書かれていることで、
    リズム感、読みやすさに繋がっているのかもしれません。

    ところで、中島みゆきのラジオって、
    ポエトリーリーディング的で、詩情がありましたね

  4. 西の子
    西の子

    中島みゆきは世代じゃないので、バズったツイートの切り抜きでしか見たことがないですが、歌詞とか、ポエトリーリーディングですよね。知り合いがポエトリーリーディングで中島みゆきの「お元気ですか」を読んでてぐっと来ました

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