むらさき色の風
埃の舞う窓を通り過ぎる
まだ新しい靴底が
乾いた藁を踏む

からっぽの部屋に
君を呼ぶ声
絶え間なくこだまする
むき出しの骨が
閉じたまぶたの奥に
ちらちらと光る

細かな水のういた躰から
白い煙がたち
音を置き去りにして
ふるえる毛の先
支えのない足が
あてもなく崩れ
伏せられた睫毛が
影をつくる

はねまわるからだが
模様を撒き散らしている
振り回される首に
腕をまわし
抱きしめるふりばかりする

白くかがやく針が
そっと体を侵すと
やわらかな時が
君を迎えに来る
そっと巻いた白い布は
いつか真っ黒になる

あばら骨がふくらみ
またしぼむ
どんどん遅くなる
ふいごが
最後に押されると
小さな部屋は
それきり止まる

つややかな首が
重みのまま
一輪車に乗せられる
無造作な縄が
ぎりぎりとくい込んでも
君は何も言わない

ふるえる君から
たちのぼる霧に
真っ赤な光が

きらきらと
降り注いでいる

コメント

“朝靄” への1件のコメント

  1. 沙一
    沙一

    おそらく、動物の死が描かれているのではないかと想像しました。しかし生々しいことは考えずに読んでもいいのかもしれません。主題を直截に示す言葉を避けておられるようで、観念よりも五感が優位に働き、幻想的な美が感じられます。

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