だれもでない電話が鳴りつづけている
白日と白夜のみわけもつかない
生命に死はないと措定する
もともとなかった死という虚な観念をこじつけたから 死は
得体の知れない不気味なものとして恐れられるのではないか
嘘だとおもうなら
親しかった故人のことをおもいうかべてみるといい
いまもなお あなたの胸にありありと生きているだろう
もともとなかった死を観念づけるためにこそ
葬式や墓がひつようなのではないか
それらがなければ──
白日と白夜のみわけもつかない
だれもでない電話が鳴りつづけている
白鳥が越冬のために旅立つことを知らなければ
西比利亜のひとびとは白鳥が死んだとおもわないだろうか
あるいは知っていたなら白鳥が死んだとしても
越冬のために旅立ったのだとおもわないだろうか
白日か白夜かわからないままでいい
受話器をとらなければ不在の声をおもいうかべていられる
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