忘却 (改)

なんだっけ
昨日の記憶
なんだっけ
あれだよ
あれ

あなたと昨日食べたパスタはおいしかったね
どこの店だっけ
駅前の小さな店
他に何を注文したっけ

私の頭の片隅の
その欠落の穴が
悲しみを紡ぎ出す

一緒にいた時間の
手繰り寄せても掴めぬ
影が淡く残る

帰り道のない冒険が待っている
思い出せないでいるこの旅

なんだっけ
昔の記憶
なんだっけ
あれだよ
あれ

あなたは最初のデートにお弁当持ってきたよね
どこの公園だっけ
春だっけ、秋だっけ
あなたといったよね

私の頭の片隅の
記憶の欠片が崩れ
迷子のように彷徨う

一緒にいた時間の
過去の断片が消え去り
笑顔が幻に変わる

冒険をしていることも気づかず
帰り道のないこの旅

なんだっけ
なんだっけ
なんだっけ
なんだっけ
なんだっけ

目の前のあなたはなぜ怒っているの
何があったの
何をしたの
部屋が汚れているのは

私の頭の片隅に
錆びたスイッチが
ぽつんと一つ

一緒にいた時間は
手繰り寄せても掴めぬ
消え行く先に

記憶の闇にただひとしずく
忘れたはずの記憶が蘇る
その時、記憶の海に静かな幕が下りる

いつだっけ
どこだっけ
だれだっけ
わたしは
なんだっけ

あたたかいばしょ
ぬくもりをかんじる
あなたはここにいる

わたしはここにいる?
いきをしている
かぜをかんじる

ぬくもりをかんじる
あなたはここにいる
いまこのときここにいる
てを…

静かな時は流れている
渦巻くこともなく流れていく
静かに静かに幕が下りる

※2024年2月11日 恋スラム 第3回 決勝で読んだ詩


投稿日

コメント

“忘却 (改)” への1件のコメント

  1. 花緒
    花緒

    朗読することに向いている作品を書かれておられますね。
    以前、読ませていただいた作品より、技術的にレベルアップしているような印象を受けました。直線的でない文言をいれることで深みがましているような。

    後半、もっと発想を飛ばしてもいいような気もしました。

コメントを残す